カテゴリー 52025年採択

桜美林大学

対象者数 40名 | 助成額 801万円

Program 越境する教育パートナーシップを育成する
認定型研修プログラム「Bridge」

  高等学校における「探究」の実践の中で、高校生の学びの場は学校から社会へと接続し、高校教員も多様な外部人材と協働しながら探究プログラムを創る機会が増えている。

  桜美林大学は、高校教員と外部人材が半年間の研修と協働を通して、新たなコラボレーションプログラムをつくりだす探究コラボレーター認定研修「Bridge」を新設した。

「Bridge」は3日間の対面演習を中心とした、半年間にわたる実践的な研修。参加者は、研修を通して生まれた新しいコラボレーションプログラムを高校現場で実践し、認定報告会に参加することで「探究コラボレーター」としての認定を受けることができる。

<研修内容>
(1)オンライン導入
・動画視聴とレポート提出 3時間程度
・zoomによるオリエンテーション 

(2)対面演習
コラボレーションを生み出す3日間の実践型研修プログラム

(3)協働実践
チームごとに高校生に向けたコラボレーションプログラムを準備・実践

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ティーチャーとパートナーの協働による探究授業の開発と実践

  桜美林大学では、高校の探究授業を支援する高大連携事業「ディスカバ!」を2019年から運営し、年間4万人の中高生がプログラムに参加するプログラムを全国的に展開している。この「ディスカバ!」の運営体制を活用して2025年に新設されたのが、探究コラボレーター認定研修「Bridge」だ。対象は高校教員と多様な外部人材で、普段あまり交流のない両者の協働によって高校生向けの探究プログラムを開発して、さらに授業で実践もするというプログラムだ。ディスカバ!の運営も務めるBridge事務局の櫻井美季氏は「ディスカバ!でも教職員向け研修プログラムは行っていますが、探究の場が学校から社会へとより開かれていく中にあって、先生だけでなく教育に関心を持つ企業人や専門家といった人材も広く迎え入れ、新たなコラボレーションの実践を目的としたのが本プログラムです」と語る。 

  本プログラムで講師を務めているのは、ワークショップデザインを専門とし、桜美林大学教育探究科学群でピア・ラーニング科目のコーディネーターを担当する中尾根美沙子氏と、高校現場で探究活動をリードし、現在は文京学院大学女子中学・高校の教頭を務める藤井亮太朗氏だ。 

  プログラムの参加募集は、高校教員を対象とした「ティーチャーコース」と社会人を対象とした「パートナーコース」に分かれている。2025年度はティーチャー25人、パートナー23人の48人が参加。「初年度ということもあり、この年は若干参加枠を制限しましたが、2026年度は前年度の経験から、どちらのコースも募集枠を拡大し参加者を受け入れています」と櫻井氏。応募者には、ディスカバ!プログラムの連携先の高校教員、すでに社会人向けのワークショッププログラムに参加されている方、財団の助成先など、事務局にとって身近な教育コミュニティの方々も少なくなかったが、SNSの広告から応募された方も多く、「教育に携わりたいと考えている人材の潜在的ニーズをうまくキャッチアップできていると考えています」と櫻井氏は語る。 

18の高校で計22回の実践授業を開催

  プログラムは、大きく4つのフェーズに分かれている。研修初期の1~2か月間は、オンラインによる導入期間。ワークショップデザインや探究に関するオンデマンド動画の教材を各々が視聴してレポートを提出し、コース別のオリエンテーション1回ずつと合同オリエンテーションもオンラインで行われる。 

  お盆休み期間中に、参加者全員が同大学のキャンパスに集う対面演習は、言わば3日間の集中合宿だ。1日目に全体でのワークショップ体験、2日目にはチームに分かれてアイデアをまとめ、3日目にはプログラムとしてデモンストレーションできるまでに仕上げるという濃密なスケジュールだ。チームは両コースから2~3人ずつで編成される。全員がほぼ初対面だが、すぐにお互いの所属が分からなくなるほど打ち解け合うという。 

  9月以降は、対面演習で組んだチームごとに、オンライン等でのミーティングを重ね、プログラムを高校への実践に向けてブラッシュアップさせていく。この期間では、月に一度、全体オンラインミーティングが行われ、チームごとの実践の進捗共有や「心のエンジンが駆動するとは?」などをテーマに参加者の議論を深める時間を提供している。基本的にチーム主導での活動が続くが、その間も事務局はサポートにも努めている。「いつでも相談できる窓口をつくり、参加者の皆さんの進捗状況を見ながら、どのような伴走がベストなのか試行錯誤しながらサポートしています」と櫻井氏。問題なく自走するチームもいるが、途中で活動が停滞しかけるチームもある。チーム内の目線合わせを提案したり、自信を持って進めるように背中を押したりという事務局からの働きかけに加え、研修ディレクターに直接相談して解決のヒントを得てもらう機会も設けている。 

  各高校でのプログラムの実践に関しても、実施時期や場所、回数はチームに委ねられる。2025年度は、最終的に全10チームが18の高校で22回の実践を行った。幅広い人材がプログラム開発に加わることで授業の内容は多様になり、生徒の反応も普段とは明らかに変わったという感想が、プログラムに参加する教員から多数寄せられている。また、教員側にも変化は見られたようで、いつもより熱量が高い教師の姿に生徒たちが驚いていたという。パートナーコースからの参加者からは、高校生の反応に触れたことで人生観が変わったという感想も寄せられ、プログラム実践後に地域の小学校の学校運営協議会に参加し始めた事例もあるなど、教育との関わり方を根本から見直すきっかけになっているケースもあるという。 

  実践されたプログラムの内容は実に多彩だ。元アナウンサーのパートナーがいたチームは、その専門性を活かしプログラムを考案し、入学前の新入生に向けた学校PRショート動画を作成するプログラムを実践した。チームビルディング、インプット、制作、試写会、そして独自の賞の授与までと、実に8コマにもわたる授業設計で生徒たちの主体的な参加を引き出した。さらに、発酵の専門家と組んだチームが、1日でできる味噌作りを通じて食と科学への探究心を育てるプログラムを展開するなど、外部人材の専門性がプログラムの可能性を大きく広げる事例が次々と生まれていた。 

  メンバーが日本中から集まっていることから、遠方のメンバーがオンラインで参加するハイブリッドの授業も多かったが、北海道の高校での実践に、他メンバー全員が前日の作戦会議から自費で参加し、翌日2時間の授業を行うという熱意をもったチームもあったという。 

対面演習の1日目の様子。ワークショップを体験しながら学ぶ。

対面演習の最終日に当たる3日目には、作成したプログラムのデモを実施した。

2025年度の対面演習に参加したメンバーの集合写真。その表情からは、ハードなスケジュールをやり遂げた充実感がうかがえる。

高校での実践の様子

高校での実践の様子

「探究コラボレーター」というネットワークが教育現場を変える

  3月には1年間の活動の集大成となる認定報告会が同大学で開催された。報告会では各チームの実践内容だけでなく、それぞれのプログラムが持つ社会的意義や、教育現場が抱える問題までをも含めた発表が相次いだ。「その中で紙を高く積み上げるペーパータワーの授業を報告してくれたチームがありました。高さを競うことに目を奪われがちですが、形状だったり安定性だったり、他にも評価されるポイントはいくつもあることを感じてもらうという興味深いプログラムでした。しかしその様子をつまらなそうに見学している先生がいたそうで、生徒よりもまず教員の価値観を変えなくてはならないという気づきを報告してくれました。このように現場で拾い上げたたくさんの気づきをチーム内で何度も話し合い、現場をどう変えていくかというところまで突っ込んだ発表をしてくれたチームがいくつもあり、本プログラムの意義を証明する報告会になりました」と、櫻井氏と共に事務局を運営する勝瀬祐介氏が、本プログラムの手応えを語る。 

  報告会の5日後、ディスカバ!の窓口から応募してきた中高生向けに、3組のチームが同大学のキャンパスでプログラムの実践を行う1dayプログラムというスピンオフ企画も実施された。「学校での実践が早めに終わり、他の現場での実践もしてみたいというチームの希望を受けて開催したものです」と櫻井氏。学校の授業での反省も踏まえ、さらにブラッシュアップされたプログラムが、対象を変えて行われた。参加した中高生は自ら応募してきた生徒たちだけに探究活動への積極性は高く、3組のチームメンバーも大きな刺激を得たという。 

  2025年度は参加したメンバー全員が無事「探究コラボレーター」に認定された。公的な資格ではないが、本プログラムを体験した仲間同士が結びつくコミュニティづくりこそが、認定の目的だと櫻井氏は語る。「1期の修了生の何人かには、2期のプログラムのサポーターとして対面演習や視察に参加してもらい、フィードバックしたり、壁打ちの相手を務めたりしていただいています。こうしたつながりが年々積み重なることで、探究コラボレーターのコミュニティが広がっていき、新たなステージに進むことを期待しています」と櫻井氏。実際、受講生同士のコミュニティツールとして開設したLINEのオープンチャットでは、研修終了後も互いの活動を告知し合う活発なやり取りが生まれているという。 

  教員と社会人がパートナーシップを結ぶというこのチャレンジは、新たな探究教育の実践だけでなく、学校と社会をつなぐ架け橋=Bridgeとして、大きな可能性を秘めている。 

本プログラムの集大成となる認定報告会は、2026年3月に桜美林大学新宿キャンパスで行われた。同大学の小林雅之 教育探究科学群学群長・特任教授からプログラム参加者に大学認定書が授与された。

認定報告会での集合写真。この第1期生の中の有志が第2期生のサポートも務めているという。

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