カテゴリー 42025年採択

国立大学法人千葉大学
国際未来教育基幹
高等教育センター

対象者数 400名 | 助成額 300万円

Program 予測不可能な時代の環境課題解決人材育成プログラム
~学生主体の環境マネジメントシステムと
全学副専攻プログラムを活用した実践型教育の推進~

  本プログラムは、千葉大学が20年にわたり運用してきた学生主体の環境マネジメントシステム(EMS)と、2024年度に創設された全学副専攻「環境サステナビリティ実践学」を活用し、VUCA時代に対応した「環境課題解決人材」の育成を目指す実践型教育である。

  学生は「環境マネジメントシステム実習」や「企業における環境サステナビリティ」といった副専攻の必修科目を通じて、文理横断的な知識と実務経験を獲得、特に「社会との接点強化」と「アウトプット力の向上」に注力し、企業・自治体等と連携した実践活動を展開していく。

  この取組みにより、学生の視野拡大と課題解決力の深化を図るとともに、その成果を国内外の大学と共有し、波及効果を高めることを目指す。

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学生主体のEMS運用+単位化・資格認定=千葉大学方式

  千葉大学が環境マネジメントシステム(EMS)の国際規格ISO14001を取得したのは2005年1月。以来20年以上にわたり同規格の認証を維持継続している秘訣は、「千葉大学方式」と呼ばれる独自のシステムにある。その主体となっているのが、学長直下のEMS組織内に位置付けられた「環境ISO学生委員会」という学生だけの組織だ。

 「2003年に倉阪秀史教授(当時助教授)のゼミ生が中心となり、学生主体でISOを取得するために発足しました」と語る岡山咲子講師は、実は同委員会の初代委員長。卒業後、京都大学大学院を経て民間企業に就職し、2014年に同大学に復帰。現在は国際未来教育基幹高等教育センター講師として同委員会の指導教員を務めている。

  ISO取得が目標だった同委員会だが、認証取得後は学内におけるEMS運用の中核業務である環境目標や実施計画の作成、内部監査員、基礎研修講師、サステナビリティレポートの編集業務に加え、20以上のチームに分かれて省エネ・省資源啓発活動、緑化活動、自然保護活動、環境教育推進活動、SDGs啓発活動などを幅広く担当。2009年にはNPO法人格も取得し、学外にも活動範囲を拡大した。全ての活動が学生の主体によるという点も、同大学のEMSの大きな特徴だが、他に類を見ないユニークな点は、委員会における活動実績が正式な修得単位として認定されていることだ。委員会のメンバーは、全員「環境マネジメントシステム実習」という1~3年にわたって履修する科目を受講しており、日々の委員会活動が単位取得に直結している。

 「千葉大学方式の導入を検討したいとする他校からの相談も数多くありますが、『単位化』が一つのハードルになっているようです」と岡山講師。委員会を構成する学生は、1~3年の約250人。毎年3分の1のメンバーが入れ替わる組織の中で、学生たちのモチベーションを維持し続けるために単位化は必須条件だと語る。また3年次に委員会の役職に就いて活動した学生には、「千葉大学環境エネルギーマネジメント実務士」という学内資格も与えられ、単位化と資格認定のスキームが「千葉大学方式」の核となっている。

1~3年の約250人で構成される「環境ISO学生委員会」

「千葉大学環境エネルギーマネジメント実務士」の認定式

課題を伸び代と捉えた全学副専攻プログラム

  2024年10月、同大学4つ目の全学副専攻プログラムとして「環境サステナビリティ実践学」が創設された。「環境サステナビリティ実践学」は、前述の「環境マネジメントシステム実習」と、新設した「企業における環境サステナビリティ」を必修科目に据え、一般教養科目と各学部の専門教育科目を横断する約120もの指定科目で構成されている。

 「環境サステナビリティ実践学」の創設は単なる制度の変更ではなく、同大学のEMSが次のフェーズに移行したことを意味すると岡山講師は語る。「20年以上にもわたり環境人材を育成してきた学生委員会の活動は、大いに評価されるべきもの。とは言え、それでも委員会メンバーは全学生数の約3%に過ぎず、委員会の存在すら知らずに卒業していく学生も少なからずいます。また、活動が20年以上もの長きにわたるがゆえに、過去の活動の踏襲に留まるケースも近年は散見されます。こうした課題をネガティブに捉えず、むしろ伸び代と考えて副専攻プログラムをデザインしました」。「環境マネジメントシステム実習」の内容は大きく二つの柱から成る。一つは座学であり、環境マネジメントシステムの基礎知識やISO運用に必要なノウハウ、内部監査員としてのスキルを体系的に学ぶ。もう一つは実務スキルの習得で、メールの書き方や日程調整、企画書の作成といったビジネスの基礎を、実際の活動の中で実践しながら身につけていく。

   もう一つの必修科目「企業における環境サステナビリティ」は、サステナビリティ経営に取り組む企業の担当者が登壇するオムニバス形式の講義が中心の科目。複数企業の担当者からお話を伺い、最後にパネルディスカッションを行うことで、学生は企業の現場感覚に直接触れる機会を得る。学部ごとに開講されていた指定科目も、所属学部によらず受講できるようにすることで、学内の環境・サステナビリティ分野のリソースを全ての学生が体系的に学ぶことができるようになった。

※千葉大学全学副専攻プログラム:所属学部での主専攻とは別の分野を体系的に学べるプログラム。所属学部以外が提供する科目群の中から16単位(より小さなまとまりとして8単位のバンチプログラムも設定)を履修することで取得となる。卒業単位には含まれないものの、卒業時に修了証書とデジタル証明書であるオープンバッジが発行され、「第二の専門分野」として就職活動でアピールできる

委員会による内部監査の様子

企業の担当者が登壇する「企業における環境サステナビリティ」の講義

社会との接点とアウトプット力のさらなる強化を目指して

  2025年、学生主体のEMSと副専攻プログラムをさらに効果的に活用するべく、新たな方策がスタートした。キーワードは「社会との接点」と「アウトプット力」の強化だ。

  社会との接点強化については、委員会の活動において社会人と積極的に接した学生ほど、特に成長が著しいという調査結果がありながらも、そうした学びや経験を将来につなげるキャリア視野までを持つに至っていない、あるいは800人以上にも上る学生委員会のOBOGを活用しきれていないという反省から生まれた目標だ。委員会卒業生が在籍する企業数社に各10名前後の学生を訪問させ、取材記事を作成するという取組みを開始した。参加した学生のほぼ全員から「また参加したい」という回答を得るとともに「就職活動への考え方が変わった」「社会に対するイメージが前向きになった」などの声が聞かれ、受け入れた企業からも「自分も初心に戻って刺激を受けた」などの感想が寄せられた。「企業を訪問した学生の輝いた目を見て、確かな手応えを感じました。そこで2026年6月には、約100人の学生を連れて営農型太陽光発電設備の視察と社員とのワークショップを実行しました」と岡山講師。この取組みは「サステナブルスタディ・ツアー」と名づけられ、委員会とのつながりのない企業も含め、2026年度中に6社のべ170人規模で予定されている。また「企業における環境サステナビリティ」内で行われた、統合報告書という視点から企業の成長戦略を探る「企業研究講座(全3回)」や、「環境マネジメントシステム実習」内の企画として開催された「社会人とのサステナビリティ交流会(年1回)」など、好評を得た単発の講座・企画も、2025年度に続けて行われる。「2025年のサステナビリティ交流会には学生21人、卒業生36人が参加しましたが、卒業生同士にも約20年の年齢差があり、とても良い交流ができたと大好評でした」(岡山講師)。こうした必修科目内のプログラムだけでなく、指定科目にも外部人材を招く試みが始まり、社会との接点強化は着実に進んでいる。

  アウトプット力の強化に関しては、同大学のEMSが国内外で数々の賞を獲得しているにも関わらず、他大学への横展開が進んでいないという課題を踏まえたもの。これには質問頻度の高いQAを分かりやすくまとめたWebサイトやこれまでの活動をまとめた動画集、企業連携のノウハウに関するパンフレット作成を進行させ、他大学での導入支援ツールとして機能させたいとしている。また、8大学9団体が加盟し同大学の学生委員会が事務局を務める「環境マネジメント全国学生協議会」のHPリニューアルとリーフレットの作成も進行中で、他大学への訪問も含め、同協議会をベースにした大学間交流活動や学生団体のオンライン交流会など、さらなるネットワークの拡大を図っていくという。

  学生委員会の卒業生が、必ずしも就職先で関連職に就くわけではない。それでも卒業生のほとんどが、「委員会の活動が仕事をするうえで役に立った」とアンケートで回答している。今やサステナブル経営が、部署によらず企業全体の共通認識であることは現役の学生にも十分伝わっているようで、「やりたいことが分からず就活に対する不安がありましたが、さまざまな経験が今後の興味や進路につながることを知り、『まず行動してみよう』という前向きな姿勢になりました」と、社会人との交流の意義を語る学生もいた。

  自走に向けた取組みとしては、協賛企業の冠講座を設置して寄付を募るなどの計画も進行中だ。振り返れば20余年分の足跡。「千葉大学方式」が、新たな伸び代を見つけて第2章に突入し始めている。

統合報告書をテーマに企業の成長戦略を学ぶ「企業研究講座」

約100人が参加した営農型太陽光発電設備での「サステナブルスタディ・ツアー」

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